PHL: Portal開発者とのインタビュー (07/9/30)
Planet Half-Lifeは、Portal開発者であるKim SwiftとJeep Barnettに対して行ったインタビューを掲載している。
Pratt: Portalが生まれた発端ついて教えて欲しい
Kim: まぁ、言うなれば私達には変わった経歴があります。基本的にライターであるEricをのぞいて、私達チーム全員がデジペン工科大学の最上級生でした。あれは二年ほど前の出来事で…
Jeep: 二年と三ヶ月だ。
Kim: …そして私達全員がNarbacular Dropというゲームを一緒に作りました。デジペンでは毎年、教科課程の一環としてゲームを作る必要があるのです。また、デジペンでは毎年、卒業生のための博覧会を開催し、カリフォルニア、シカゴ、ワシントンといった各所から、大勢の開発者を招きます。生徒の作品を見るためにやってくるわけなのです。そしてVALVeからの二名ほどが立ち寄りNarbacular Dropを目にし、「おもしろい」と思ったそうです。これが、Portalの前身でした。そして彼らにVALVeへと来るようにと言われ、ゲームをお披露目しました。
私達はただ、どの点が良く悪かったのか、意見を聞くためだけに招かれたと思っていました。15分の実演後、Gabeは部屋での話し合いをやめさせ、私達に顔を向け卒業後は何をするのかを聞いてくる。私達は「うーん、できれば…職にありつければ…」といった感じでした。そして彼は、VALVeに働きに来てSourceエンジンでPortalを作る仕事を私達にその場で提示したのです。
P: 元々のチームは何人で構成されていたのか
Kim: 7人。3人のアーティストと4人のプログラマです。
P: そして何人がここに
Kim&Jeep: 私達全員(笑)
P: Narbacular Dropの開発期間は
Kim: 8ヶ月。もちろん私達は通常の授業も受けていたので、2学期の間、1日に数時間程度はやっていたのでしょう…
Jeep: …フルタイムの作業ではなかった。
Chief: それでも十分、素晴らしいスケジュールだ…
Kim: ええと、それはたった15分のゲームでした。私達はただアイデアを見せ、願わくばその作品に何かしらよいもの見いだせれば、と思っていただけなのですが、その行く先に私達は非常に驚いています。
P: どこかのエンジンを使ったのか
Kim: いいえ。私達のエンジンは、DX9と音源用にFMODを使った以外は完全に一から作ったものです。プロジェクトの要件の一部であり、1から作る必要がありました。
Jeep: 必要なのは、「1から作る」ことと「3D」であることだけだった。それを満たせば、何をやってもよかった。
P: 「A評価」は貰ったのか(笑)
Jeep: (笑) ああ、「A」を貰った。
Kim: (笑) ええ。
P: Narbacular Dropが今で言うPortalの形になるまでどれだけかかったか
Jeep: 数ヶ月くらいだったと思う。次学期が来る前の夏の間に、デザインのアイデアを出し始めた。そしてそういったアイデアの全てがNarbacular Dropのもの、というわけではなかった。30あまりの様々なアイデアを出し合い、それを気に入るまでいろいろと組み合わせていた夏の間中、私達はデザイン作業を多少行い、そしてそれから、始業時に実際の開発を始めた。
P: 初心に返るため旧作からやり直したことは
Kim: 大いにありました。私達は間違いなく、「2つの入り口(portal)があり、一方に入ると、もう一方から出る。つまり一方を見ると、もう一方を見ることに…」といった構想を維持したかったので。
Jeep: …そして左右のクリックといった、ある種の制御方式についても。ユーザの飲み込みがいいことを私達は理解していた。
Kim: そして私達は、HUDを本当に簡潔明瞭に保ちたかったのです。それは私達が旧作であるNarbacular Dropから学んだものであり、乱雑なものを好みませんでした。(Jeepを見て)…そして他に私達が学んだことと言えば。
私達は実際にプレイヤーに教え込む(train)ことが必要だと言うことです。それはNarbacular Dropでは全くやっていなかったことですが、楽しくプレイできるであろう人々のやる気をそいでしまうようなことです。「これは本当に奇妙で混乱するなぁ。別の部屋に行ったんだろうか、自分は何をしているんだろう…分からない…」のように。
Jeep: 大抵は…、もし「プレイし続けるんだ、プレイし続けるんだ」といって、人々を30分かそこらPCに縛り付けておくことができるのであれば、一度理解してくれさえすれば彼らは非常に楽しめるようになるだろう。ただそれでも、幾人かは「オレはゴメンだね」となるだろうが、それはそれだ。
P: いや、それは私も分かる。そこに座ったら…なぜかどこかのバスルームらしきところから始まって…
(全員笑う)
…だろう? それから「オーケー、ここから出ることもできない…こりゃ先行きが思いやられるな」となる。それから少しばかり進んで、心折れ始める。だってそこは明らかに今住んでいるところと違うわけで…
Kim: そうね…
P: そして今いるところがどこだか、本当に分からない
Kim: その部屋は非常に、非常に意図的なものなのです。ある種、馴染みのある対象物が設置されている部屋から始まるようにしています。そしてきっかり1分間、閉じこめます。身の回りのものをしっかりと目に焼き付け、状況を理解させたいのです。そしてPortalをくぐった際、今までいた部屋が目に映ります。Portalを通して自分自身が見え、「おお、自分は別次元に行った訳じゃないし、別の部屋に行ったわけでもないんだ。自分はただこのPortalを通って、この部屋の別の場所に移動したに過ぎないんだ」ということが理解できるのです。
P: 足に何かが結んであることに気づいたが…
Kim: ふむ、ふむ…
P: これは何だろうか
Kim: ええと、それは一種の謎ですが、このゲームでは落下ダメージがない、ということをプレイヤーに知って欲しいという役目を果たしています。ですから数階の高さから落ちた際の衝撃吸収を行う、人工装具のようなものです。
P: 主人公には参考モデルのようなものはいるのか
Kim: (Jeepに)…Alesiaでしたっけ。顔のモデルはAlesia Glidewellです…
P: …チームメンバーの一人か
Kim: …いいえ。基本的に私達は地元のモデル事務所を使って、「私達の好みに合う」人間を捜しました。彼女は私達のモデルで、基本的に体の構造と顔の両方を使っています。
足の構成部に限っては、メンバーを使ったとも言えます。
P: デジペンを離れてPortalが店頭に並ぶまで、どれくらいの期間か
Kim: (Jeepに)2年と4ヶ月くらいでしたっけ。
Jeep: その通り。
P: Narbacular Dropで参考にしたゲームは
Jeep: その当時、私はICOに夢中になっていたと思う。これは環境パズルゲームのようなもので、自然環境を見回してそこで何をしなければならないのか、そしてそれをするには何を解かねばならないのか、という内容だ。その時点ではそれに大きな影響を受けたのだろうと思うが、うちのチーム全員がそれぞれ全く異なるゲームをしている。KimはRPGを、Dave (Kircher)はFPSやRTSを良くプレイするように。多くのゲームから多くのいろいろな体験が混ざったものだ…
Kim: …そして私達はその全てを楽しめたでしょう。
P: VALVeがこういったタイプのゲームに興味があることに驚いたか
Kim: 最初はそうでした。その後、理由を耳にした気がします。Gabeは本当にNintendoのゲームを愛しています。彼のお気に入りは、N64版のSuper Mario Brothersだと思います。そして彼は、こういったタイプのゲームは多くの人に受け入れられるだろうと思ったのでしょう。
P: これを単体のゲームと見ているか、それとも他のゲームの付随的なものと
Kim: 私達がはじめに着手したときは、HL界の片隅に位置する私達独自のものとしてみていました。Portalは数多くの他のゲームに比べ、非常に異なる雰囲気を持っています。ただ私は、エピソードに入るとかマルチプレイゲームになることに、多くの可能性を感じています。多くの可能性があるに違いないと思っていますし、この先どうなるかなんて誰が分かるでしょうか。
P: そうしたい気持ちは、それともとにかく現在のものを世に出したいか
Kim: その通り。私達はただ、これが世に出るのを見てみたいです。これは私達の最初となる、本当に巨大なプロとしてのゲームなのです。これは私達の子ですし、私達はついにこれを一人前として世に出すのを目にできます。他の人々がプレイした反応を見てみたい。彼らは何を欲しているのか。マップパックは必要か。マルチプレイはやってみたいか。Portal 2はどうだろうか。そしてそこから、考えてみたいと思います。
P: その質問の答えはきっと「イエス」だと思うが
(全員笑う)
Jeep: その全てと。
P: プレイヤーがほぼ自在に移動できることに絡む計算は大変だったか
Jeep: その多くはデジペンで学んだ。今ここでやっていることの予行練習みたいなものだったと感じている。私達はそういった演算方法について学ぶ授業を全て受けた。学校で習った線形代数を使用しているに過ぎないが、それに関してはそれほど複雑ではない。実際にもっと複雑だったものは、それを使用してSourceエンジンへ物理を組み込み始めた後だった。全てが正しく動作するよう、つまり、こちら側のPortalの物体がこれと衝突する際…
Kim: …つまりHavokは私達にとって、当たりをつけることに慣れていないということです。全てのコードを調べてみなくてはならなくて…
Jeep: …そして大抵の世界では、ジオメトリの衝突判定の全てがPSP Treeやその類のもので事前計算されている。だから言うなければ、私達はこの事前計算された世界へ突然生じる物事を処理するということであり、それは大変な挑戦だったというわけだ。
P: 以前はほぼ直線的だったが、今は自在にいけると…
Jeep: その通り。ユーザへ物理システムを常時変更させることを可能にしている。それは大きな問題だったが、しかし…私達は成し遂げた(笑)
P: 「15」だったか、壁越えに十分な落下が必要で、適した発着点を探さねばならなかった
C: 私の場合、全く違う方法で向こう側へ行った
Kim: それが私達のゲームのおもしろいところで、人々が各個のパズルをどうやって解くのかを観察するのは、非常に興味深いです。ほぼどこにでもPortalを置くことができるほど、開けているからです。誰もが異なる方法でパズルを解くことになるのです。
C: 再プレイ性や毎回異なるエンドにすることがゲームの延命につながると
Kim: そしてそれが、同様にAdvanced ChambersやChallenge Modeの目標なのです。異なる視点から見る必要があるという。
P: 最初の19レベルを終えると選択できるのか、時間の都合で確認できなかったが
Kim: ええ。ゲームのクリア後、Challenge ModeとAdvanced Modesがアンロックされます。
Jeep: そのモードは全くの一歩道ではない。基本的に、以前クリアしたレベル(chamber)のいくつかから自由に選択し、異なる挑戦を行うことができる。「最少Portal数(least portals)」、「最少歩数(least steps)」、「最短時間(least time)」があり、その全てが各々の方法で機能する。いくつかの点で「最少歩数」は、「最少Portal数」と全く正反対に機能する。「最少歩数」では出口までの移動距離を減らすため、Portalを最大限使用することになるからだ。
それにはBronse、Silver、Goldのランキングが存在し、機能するようになっている。各ランキングはそれぞれがパズルのような種別となっている。「このレベルをクリアした」と言えば、それは1つのパズルだが、「5つのPortalを使ってクリアした」と言えば、なんと、それは別のパズルになるといった按配だ。
(全員笑う)
それからAdvanced Chambersは、私達が特定のレベルを選びそこに新たな物を加えたり外したりしている。なので今までそのレベルをクリアした方法が通用しなくなっているので、新たな方法を探し出さなくてはならない。
Kim: 最初はマップへ入れようと思っていたけど、ちょっとばかり嫌らしいと感じたものだったので、「よし! じゃあボーナスマップにしよう」と思いついたものなのです。ですからあなたが本当に、本当に(腕が確か)ならば、クリアできます。
P: 仕事に就いた当初から他のVALVeチームからのリソースは使えたのか
Kim: 元々私達はRobin Walkerと働き、VALVeに適合するようある程度の指導を受けてきました。それから私達はいわば自分自身のユニットをしばらくの間組み、時折アートからの助けを得ることになっていました。ですからHLシリーズを数多く手がけてきたRandy Lundeenが来て、ある程度のアートを手伝ってくれました。基本的に私達は指導や助言などを得るために外部の人間を頼ります。ただし大部分は私達だけで行いました。Ericという例外はありますが。Ericはもちろん、私達のかけがえのないライターですので。ですから、大詰めの時を迎えるまではほとんどが私達でしたが、EP2の作業を終えた人達が増えるにつれ、多くのアートの助けを得ることができました。
P: 現在の制約から次のバージョンへ持ち越した物はあるのか
Kim: そうですね。私達には是非ともやりたいが「オーケー、まずはこれを優先する必要がある」といった膨大なリストがあります。それから私達がやりたいと思う長々としたリストがあります。
Jeep: 私達はデジペンで、ごく小規模なチームでごく短時間にゲームを仕上げるよう良く訓練されたと思っている。私達は自分の制限を理解し、その範囲内で作業したりいくつかは取り込もうとする試みを行う。だからここに来て、全てが成し遂げられないことを悟っても私達にとっては何の問題もないのだ。よしこれをやろうとか、これは一番おもしろいんじゃないか、じゃあそっちをやろうとかね。以上が私達が切り分ける方法のような物だ。
Kim: 何が一番効果的なのか、費用対効果の査定するということです。
P: 何も知らないプレイテスターを呼んで観察することはあるのか
Kim: ええもちろん。毎週です。
これはいわばVALVeのポリシーで、毎週誰かを招いてゲームの一部分をプレイさせ観察します。あるいは私達の場合、長い時間をかけて全てのゲームをやらせて…ただ彼らを観察します。人間を観察するだけで、だいたいの情報は得ることができます。後で質問を投げかけるということではなく、顔の表情を見るだけでいいのです。彼らが迷っているだとか、楽しいとか悲しいとかが分かります。ゲームでの反応と同様に、全てが顔の表情で出てくるのです。
Jeep: そして可能ならば、Portalのことを全く知らない人を採用するよう心がける。そうすれば最高の反応を得ることができる。「私は何をプレイしているんだろう」といった感じで。(双方笑う)
Kim: それから私達は彼らに何も告げません。私達はただ彼らを座らせ、こう言います。「オーケー、それじゃあ家にいるつもりでプレイして。私達がいないつもりで。本当に詰まった場合は質問してもいいけど、私達は何も答えないから(ほほえむ)。でもそれは私達にとってあなたがどこで詰まったのか、そして何をしようと考えているのかを知る手だてとなるから」
Jeep: 「あー、オレはあの赤いライトのところへ行かなくちゃいけない気がする。あのライトは非常に重要な気がするからだ」と考えてるかもしれないからね。そしたら「オーケー、私達はあの赤いライトを取り除かなきゃならないな」ということが分かる。
P: プレイの観察で思いがけない行動を目にすることはあるのか
Kim: ええ。しょっちゅうです。今日だってプレイを観察して「えー、そんなことできるなんて知らなかったわ」となるんでしょうから。(全員笑う)
P: …ゲームを作ったにもかかわらず
Jeep: でもそういうことなのだ。初期の頃にもそういうことが分かれば、非常に素晴らしい。「おお、彼らは私達が想定していたよりもずっと楽しい方法で説いたな。じゃあそれ用にパズルを作ってみようか」となるからだ。そこで私達はその解法を基にしたパズルを作成する。だから、反復してゲームを構築することの助けとなる。
Kim: そしてそれは、私達が学生だった頃に知っておきたかったことです。Narbacular Dropでは一ヶ月ほど前になるまでプレイテストをしなかったし、そのせいで何をするにも遅すぎてしまったのです。「これだけの問題を抱えているが、修正をするつもりはないし、その時間もない。やれやれ」のような感じだったのです。でも今では、文字通り最初の週からプレイテストを行い始めました。照明のない「full bright」の部屋で。非常に見た目が悪かったのですが。でもそれによって、私達はどう進んでいけばいいのかのよいアイデアを得ることができたのです。
Jeep: Portalは四角ではなく丸い方がいいのでは、と気づかせるような非常に単純なことでも、私達に追加の利点を提供してくれる。最初のプレイテストで気づくよう物事だ。四角いPortalで何ヶ月も費やした後で丸いのが必要だったとならなくてよかったよ。(双方笑う)
P: 第一子の生誕(Kimが笑う)まで3週間だが、緊張は
Kim: 少し。まだ十分事態を飲み込めていないと思います。頭の片隅では「ああそうだ、この日がやってくるんだ」とありますけど。実際に店頭で目にするまで把握できるか分かりませんが、私はおそらくその場で心臓麻痺を起こして死んでしまうでしょう。(Jeepへ)私は分からないけど、あなたは。
Jeep: どうだろうか。私はほとんど正反対のことを感じている。自信満々だ。ゲームをプレイした人を本当に数多く見てきたから言えることで、ずばり完璧だと思っている。
P: EP2とTF2と共に発売されるとは信じられないか、それともそれほど…
Kim: (強調して)そんなことはありません。期待とかで表せる物ではないです。驚異的な製品に同梱されるとは本当に幸せなことだと思います。つまり、名誉あることだということです。
Jeep: その通り。私はずっと昔からHLシリーズの大ファンだし、そういったものに同梱されるとは驚異的なことだ。それと同時に、単体で売っていたよりもおそらくずっとたくさんの客を得ることになる。
P: VALVeにこれなかったら、何をしていただろうか
(双方深いため息をつく)
Kim: たぶんどこか別のゲーム会社に…
Jeep: ここに来る前はカジュアルゲームの会社で働いていて、ブロック崩しのクローンのような物を作っていた。あれは本当にクールだったし、きっと今でもそこにいただろうが、それでもこれに比べたらとうていかなう物ではないだろう(笑)。
P: 次は
Kim: どうでしょうね。次に何をするかと思うとワクワクします(笑)。


